ちこういん

悪者は揉め事を探しています

掠め取る
 
悪者は揉め事を探しています。
 
 
お釈迦さまの過去世の物語です。
 

昔、バーラーナシーの都でブラフマダッタ王が国を治めていたころのことである。
 

ひとりの菩薩が、川岸に生えた一本の柳の木に生まれ変わっていました。

ある日、近くに住む山犬の夫婦が
「おまえさん、川の中ほどでびしゃっと言う音がしたでしょう、あれなんだと思う。赤い大きな魚、おいしそうよ。ねえ、捕まえてきてよ」

「そうだな、だけど相手は水の中だぜ」

「ばっかだねえ、誰か水に潜れるやつに捕まえさせればいいじゃないか」

「よーし、まってな」
 

山犬の亭主が腰を上げて川岸の柳のそばを通りかかったとき、また大きな水音がしました。
 



すると水辺の葦がカサカサと鳴って、一匹のカワウソが一直線に泳ぎだしました。
 
カワウソは水音の近くで水面から消えます。まもなく激しい水しぶき上げて赤い魚が躍りあがりました。
 
そして、その背中にカワウソが爪を立てています。


「兄さーん」

カワウソは岸に向かって呼びました。

「手伝ってくれー、ボクだけじゃムリだよー」
兄のカワウソは水を切って助けに行き、三匹の戦いが続きます。

 

やがて腹を見せた魚を、カワウソの兄弟が岸に運んできました。

「あーあ、疲れた。恐ろしく力の強い奴だったなぁ。あ、兄さん、ボクが見つけたんだから先に食べるよ。」


「ちょっと待った。俺が助けに行ったから捕まえられたんだ、だから俺が先に食べて残った分がお前のものさ。」

「そんなのずるいよ」

そこへ山犬が現れました。


「おふたりさん、もめてますね。そういうことはまず私に相談したまえよ。いいかい、赤い魚は頭と胴と尻尾でできている、まず、三つに切る。」

そういって山犬は自分の鋭い牙で魚を三等分しました。

「さあ、兄さんは頭から、弟の君は尻尾の方から食べ始めるがいい。どっちが先なんてことはないよ。」
 
カワウソの兄弟がそれぞれ魚に食いついたのを見て、

「こういう風に裁きをつけた私が真ん中の胴をいただくことにしよう。」

こういって一番おいしいところを持っていってしまいました。

 
お釈迦さまは、
そう説き終わってからこのような詩を読まれました。


まさにかくのごとく、合い争う者は富を失い、

争いを種として邪まなる者が富を得る。

実に争いは二重の悪である。
 

そして弟子たちに向かい、そのときの一部始終を見定めた柳の木の精である菩薩は、前世修行する私であったと語られました。
 
自己主張ばかりしていると、同意してくれる狡猾なものに足元救われますよ。
気をつけましょうね。
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