ちこういん

好きになってしまい・・・

道成寺といえば安珍・清姫の物語
『今昔物語集』などに出てきます
 
今は昔、熊野に参る二人の僧がいました
一人は老人で、もう一人は若い美男子です
 
牟婁の郡(和歌山)まで行って
とある人の家に二人とも宿をとりました
 
その家の主人はまだ年若い後家
女の従者が二・三人いました
 
この女主人は若い僧の美しいのを見て
ていねいに世話し、もてなしましたが
夜になって、僧たちがすでに寝てしまってから
深夜に女主人は、密かにこの若い僧の寝ている所に這って行って
僧の横に寝ました
 
僧は驚いて覚めます
 

僧に、女は言います

「我が家は一度も人を泊めたことがありません
しかし、今夜あなたをお泊めしたのは、
昼、あなたを見たときから夫にしようと思い定めていたからです
だからあなたをお泊めして、
本来の目的を遂げようとこうして近づいて来たのです
私は夫を亡くして寡婦です
あわれと思ってください」
 

僧はこれを聞いてたいへん驚き恐れて

「わたしには宿願があり、
日ごろ心身精進して遥かな道を熊野権現にお詣りに行くところ
ここで願を破るのは互いに恐れがあるでしょう

こんなことはやめてください」
と断わります

 
女は恨みに思い、終夜、僧を抱いて乱れ騒ぎ戯れるも

僧は様々な言葉でなだめすかし

「熊野に参ったその帰りになら

あなたのおっしゃるようにしましょう」
と約束しました


女は約束に安心して自分の部屋に帰ります

 
夜が明け、僧たちはこの家を発ち、熊野詣の旅を続けました
 
女は約束の日を心待ちに待っていましたが
僧は女を恐れて他の道を通って逃げてしまいます
 
女は僧の来るのを待ちわびて
街道に出て旅人に尋ねていると
熊野から来た僧がいて、その僧に聞いてみると


「その二人の僧ならもう二・三日前に帰っていった」とのこと


女はこれを聞き、怒り、家に帰って寝所に閉じこもりました

物音ひとつしませんでしたが、しばらくして女は死んでいました
 
従女たちはこれを見て泣き悲しんでいましたが
たちまち、五尋(ひろ。両腕いっぱいの長さ)もある毒蛇が
寝所から出て来ました
熊野街道を、僧を追って走っていきます
 
人づてに大蛇のことを聞いた二人
 
さては女主人が悪心を起こして毒蛇となって
追ってくるのだろうと走り逃げ
道成寺という寺に逃げ込みます


道成寺の僧たちは二人の僧から事情を聞き

二人をかくまうことにします
 
鐘を取り下ろして、そのなかに若い僧を隠し
寺の門を閉じました
 
しばらくして大蛇がこの寺にまで追ってきて
閉じた門も難なく越え、なかに入ってきて
鐘楼のまわりを一・二度回り
入り口の戸のもとに行って
尾で扉を叩くこと百度ばかり
 
とうとう扉を叩き破って、中に入ります
鐘を巻いて尾で竜頭(りゅうず)を叩くこと二時三時ばかり
 
道成寺の僧たちは恐れながらも
中でどうなっているのか怪んで
鐘楼の四面の開いて、中を見てみると
 
毒蛇は両の目から血の涙を流して
頚を持ち上げ、舌舐めずりをして
もと来た方に走り去っていきました
 
大鐘は、蛇の毒熱の気に焼かれ
炎が燃え盛っています
 



水をかけて冷やして、鐘を取り除けて僧を見ると
僧はみな焼け失せて、骨さえも残っていません
 
わずかに灰ばかりあるだけである
老僧はこれを見て泣き悲しんで帰って行きました
 
その後、道成寺の上席の老僧の夢に
前の蛇よりも大きな大蛇が現れます




「私は鐘の中に閉じ込められた僧です

悪女が毒蛇となって
ついにその毒蛇の為に捕らわれて
その夫となりました
ぶざまで穢い身を受けて
無量の苦を受けています
 
聖人の広大の恩徳にすがって
この苦しみを離れたいのです
 
どうか法華経の如来寿量品を書写して
われら二匹の蛇のために供養をほどこして
この苦しみからわれらをお救いください」
 
老僧にこう言って帰っていく姿を見て
夢から覚めました
 
老僧は大蛇の言う通り
法華経の如来寿量品を書写して供養しました
 
その後
老僧の夢に、一人の僧と一人の女が現われます
 



二人とも笑みを含んだ喜ばし気な顔つきで
道成寺に来て老僧を礼拝して言いました


「あなたの清浄なご供養により

われら二人、蛇身を捨てて善所に赴くことができました
女は利天トウリテンに生まれ

私は都率天トソツテンに昇ることができました」

このように告げ終わると
二人はおのおの別れて空に昇っていきます
その姿を見て、夢から覚めました
 
老僧は喜び泣いて、いよいよ法華の威力を尊びました
 
 
おしまい
 
安珍・清姫の物語は、もともとは法華経のお話
それが、のちのち悲恋物語となっていきます


日本では古来より【蛇の道は蛇】といいます

蛇は邪(じゃ)につうじます
邪は「よこしまな心」

仏教では「執着」から離れよと説きますが
嫉妬深い

しつこい人
怨念化してしまうもの

権力とか名声とか、金の亡者もいます

執念が強いと「蛇」化しますよ

自分の行動がしつこくなっているかどうか
気をつけたいところですね
 
 
写経
 
執着で苦しむ方
智弘院では、法華経如来寿量品の写経が出来ます




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