ちこういん

出世

3月2日 おはようございます。
 
ご訪問有難うございます。


【情けは人の為ならず】ということわざがあります。

人に情けをかけるのは、その人のためになるばかりでなく、やがてはめぐりめぐって自分に返ってくる。人には親切にせよ。という教えです。

この【情けは人の為ならず】で始まる講談に、

「春重(はるしげ)出世の富札(とみふだ)」という話があります。

「細君も偉いが主人もまた偉い」
分際を知った井上半次郎という武士の出世物語です。

*分際というのは、身のほど、身の丈とか、分をわきまえること。

紙問屋の丁稚(でつち)が店の集金一両二分をすり盗られます。

はっと気が付いて追いかけようとした処がお武家さんにぶつかってしまう。


()びを入れ仔細(しさい)を話すが、集金の金をすられ困っている丁稚を見兼ねた武士、半次郎から金を融通してもらう。

半次郎は武士でも貧乏御家人、

傘貼り内職の金二両から丁稚小僧にと渡してしまい、残りの金では年越しが出来るかどうか・・・。

途方に暮れながら、人込みの中を歩いた先の湯島天神で、富くじを一枚買った半次郎。





妻と子の待つ家に帰り、実は赫々云々(かくかくしかじか)で金を遣ってしまった旨を妻に話すと
「あなた、それは良いことをなさいました。当家の年越しについては、傘貼りを増してやれば何とでもなる。」

と、流石(さすが)は武士の妻、見上げた心がけ。

さて夫婦で内職に精を出し、どうにか年を越した頃に、富くじの当たりが発表され・・・

なんと、半次郎の買った富くじが一等の大当たり。

一千両の大金を引き取りに行こうと興奮する夫を諌(いさ)めるのは、良く出来た妻。
たとえ二人扶持(ににんふち)とはいえ武士の身でありながら、富くじなどを買ったとは情けない。
当たって興奮する様は、尚情けない。

おりしも帰ってきた息子は、大きくなったら自分も武士になるのだと云うのに、大金を手にして親の心が緩めば、子どものためにもなりますまい。どうかそのくじを今すぐ捨ててくださいませ。

「貧すれば鈍する」

と己の浅ましさに気付いた半次郎は富籤を細君の言われた通りにその場で焼き捨ててしまう。

半次郎は細君と一所懸命に傘貼りを増してやり遂げ、無事に正月も越せて、暫くしたところに、半次郎に役所より登城にて上役へ目通りせよとのお達しがくる。

上役へ目通りのため、役所へ参ると無役の武士には厚いもてなしがある。

しばしして、上役から「世間の噂を存ぜぬか」と誘いの水がある。

何事かとわからず上役に尋ねると、上役から
「近頃、千両の富籤の当たりで取りに来ない者がある。これは富籤始まって以来である。御身は何故千両もの当り籤の金を取りにこないか存じているか」

と身に覚えのある痛いところに・・・・

半次郎は
「存じませぬ」
と白をきるが、
 
上役からは
「それについては、お役目様については、既に存じておる。御身がご内儀と図って、当たり籤を焼き捨てたであろう」

とのこと。

役所、上役筋では、半次郎が富籤の当たりを知ったところから焼き捨てるまでの委細を承知しておる。

その様子を見知った者が、お役所まで仔細を届け出でし、全てを承知しておる、
「細君も偉いが主人もまた偉い。それだけの人物を無役にして置くのは惜しい。」

と寺社奉行からのお取立てを告げる。

それから十数年、ある日のこと半次郎は立派な身なりの商人に声を掛けられる。
「もし違っていたらご勘弁願います。もしやあなた様は、十七年前の師走の二十五日に、一両二分のお金を小僧に・・・」

「おぉ、そのようなこともあったのぉ」

「やはり、そうでございますか。そのときの小僧が、私でございます」

(しわ)い主人に責められることを恐れ、あの時は川に身を投げてお詫びするしかないと覚悟した自分が、こうしていられるのも、全てあなた様のおかげである、もう一度ぜひお目にかかってお礼を云わねばと、そればかりを毎日神仏に祈っておりましたが、ようやく叶いました。

そして今や大店(おおだな)の主人となった小僧は、半次郎の娘を嫁に貰い、両家はいつまでも幸せに暮らしました。


いい話です。
私は講談が好き。
この話は、降って湧いたような目先の利益にとらわれず、見返りを求めること無く困っている人を助け、着実に誠実に生きて仕事をするところに結果が現れたものです。
 

信仰もこれと同じです。
世間的な感覚の、苦しい時の神頼み的に、困ったときや自分の都合のいいお願いだけをしたところで、本当の功徳とはなりません。

架空の神仏に自分の煩悩をぶつけたところで、功徳がある道理が無いのです。

本当の信仰とは、

正しい仏様に対して、正しく因を積んだ報いとして果報を得るものなのです。
 
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